メディカル翻訳とメディカルライティング—医療の知識と語学力を活かせる仕事
みなさんこんにちは。アメリカ生活4年目、メディカルライティングとメディカル翻訳をしているYukaです。
今日は、私がフリーランスのメディカルライターとメディカル翻訳者としてどんな仕事をしているのか、書きたいと思います。
メディカル翻訳やメディカルライティングの中にもいろいろな分野がある
メディカル翻訳やメディカルライティングは、経験のない人には未知の世界だと思いますが、やっている人であっても他の人が何をしているかわからないところがあります。
特に「フリーランスのメディカルライター」というのは、日本ではまだ珍しい存在なのかもしれないと最近気づきました。
メディカルライターと一口にいっても、仕事の内容はさまざまです。
大きく分けて、
1、一般向けの医療記事を書くライター
2、治験や薬事申請に関わる文書を書くライター
3、医学論文や学会資料を作成するライター
がいるようです。
日本でメディカルライターやメディカルライティングと言った場合、2番目の治験や薬事申請に関わるものをさすことが多いです。また、一般向けに記事を書くライターは、医療ライターと名乗っている場合もあるようです。
メディカルライティングの作業内容
私が主に関わっているのは、3番目の医学論文や学会資料の作成です。同じ仕事をしている日本人の人にはまだ出会ったことがないのですが、海外在住の研究者が副業としてライティングをしているケースが多いのかもしれません。
医学論文の場合は、論文の執筆(図表の作成を含む)、代理投稿(可能な雑誌の場合)、査読対応などを行います。
投稿先によって、日本語の場合も英語の場合もあります。日本語のほうが楽かというと、そういう訳でもありません。日本語でも英語でも図表を作ったり、引用文献を探す手間は同じで、むしろ英語の用語を適切な日本語に置き換えるのに時間がかかることもあります。また、日本語の論文を書く場合は、日本語で書かれた文献を引用することがあり、EndNoteなどの文献管理ソフトに書誌情報を取り込むのに通常より手間がかかります。
もちろんすべての作業を一人でするわけではなく、製薬企業などのクライアントから提供される資料をもとにドラフトを作成してから、クライアント、シニアライター、校正者、ネイティブチェッカーからフィードバックを受けながら、何度も書き直します。
フィードバックから毎回新たなことを学ぶことができます。また、作業開始前には、クライアントや契約先のメンバーとのオンラインミーティングが開かれ、内容について話し合うこともあります。そういったことが仕事に対するモチベーションにもつながります。
一方、メディカル翻訳では、医学論文や治験関連文書を中心に翻訳をしています。現在は日本語から英語、英語から日本語が半々くらいの割合です。翻訳の仕事では、プロジェクトマネージャーさんとの事務的なやり取りのみで、案件に対するフィードバックはありません。そのため、孤独な作業だと感じることも多いです。
メディカル翻訳とメディカルライティングの比較
メディカル翻訳の利点は、メディカルライティングに比べて回転がはやいところです。私が受注する案件の多くは、締め切りが1週間以内で、翌月には振り込みがあります。
メディカル翻訳の欠点は、たとえ原文の内容がわかりにくいと思っても、勝手に直せないことです。メディカルライティングをしばらくやってからメディカル翻訳に戻ると、原文を書き換えたいという思いに苦しむことがあります。翻訳は原文に忠実に訳すのがルールなので、原文から離れすぎないようにする必要があります。それが窮屈に感じられることがあります。
一方、メディカルライティングの利点は、自由度が高いところです。もちろんクライアントの意向から大きく外れないことが基本ですが、翻訳に比べると自分で判断する部分が多いです。
メディカルライティングの欠点は、今のところあまり感じていないのですが、強いて言えばスケジュールにむらがあることです。自分の持ち時間は決められているのですが、クライアントのレビュー期間がずれることはよくあり、たくさんの案件のフィードバックが一度に戻ってくることがあります。また、数か月にわたる長期のプロジェクトがほとんどなので、収入も不定期になります。
今日は、医療の知識と語学を活かせる仕事であるメディカル翻訳とメディカルライティングについて、私自身の経験をもとに紹介しました。医療の知識と語学を活かせる仕事には、医療通訳もあります。コロナ以降、オンライン通訳の機会も増えているようです。話すのが得意な人は、それも選択肢にいれることができると思います。