メディカル翻訳の基本—用語の調べ方や役立つ教材
こんにちは。アメリカ3年目のYukaです。
ありがたいことに今度ゲストスピーカーとしてメディカル翻訳学習中の方とお話しする機会があり、事前質問もいただいたので、その準備をかねてこちらにも記録したいと思います。
メディカル翻訳でよく使用する辞書は?
初心者がメディカル翻訳の基礎知識が学べるおすすめの教材は?
メディカル翻訳で大変だと思うことは?
1. 辞書について
私は、基本的な用語についてはMacBookにあらかじめ入っている辞書(ウィズダム英和辞典、New Oxford American Dictionary)、英辞郎(https://eowf.alc.co.jp/)、ライフサイエンス辞書(https://lsd-project.jp/cgi-bin/lsdproj/conc_home.pl)を使っています。
専門用語については、Google検索して英語のサイトでそれがどう使われているか意味を確認します。ダブルクオーテーション(“ ”)を使って、その単語自体や周辺の単語と一緒に調べると、絞り込むことができます。これは英文を書くときにも使える便利なテクニックです。
日本語の薬剤の添付文書、厚生労働省が公開している資料、製薬会社のウェブサイトのプレスリリース、治験情報サイト(https://clinicaltrials.gov/)などを参考に訳語を選んでいます。
また、一般的な頭文字・略語はhttps://www.allacronyms.com/で分かる場合もあるのですが、一般的でない場合は本文中から探し出すか、Google検索、それでも分からなければプロジェクトマネージャーさんを介してクライアントに確認します。
また、英訳に必要なルールはAMA manual of style、治験に関するきまりは「医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)のガイドライン」(英語版、日本語版)を参考にします。
2. おすすめの教材
トライアル合格に直結しそうな教材にしぼりました。
メディカル翻訳・通訳 完全ガイドブック:日本のメディカル翻訳業界がどうなっているか(翻訳する文書の種類、クライアントなど)のおおまかなイメージがつかめます。
MTSの通信添削講座:トライアルに出てきそうな文書の添削指導が受けられます。手頃な分量と値段でフィードバックが受けられるので、まず試してみると自分の翻訳の改善点を見つけるのにも役立ちます。
TQE過去問 医学・薬学:メディカル翻訳の文書例を見ることができ、誤訳しやすい部分が分かります。一つの文書が長めなので若干取り組みにくいです。
英訳には、American Medical Writers Association(AMWA)が提供しているEssential Skills(全部で7冊、日本国内では電子書籍のみ購入可能)が、英語の文章の書き方を学ぶのに最適の教材です。こちらはAMWAのメンバーであれば割引で購入できるため、まずはAWMAのメンバーになり、年に2回ある割引期間に購入することをおすすめします。
3.大変だと思うこと
実務翻訳全般に当てはまることかもしれませんが、
専門用語や一般的でない訳が多い:例えばindicationという単語ですが、普通の辞書では「兆候、しるし、表れ」ですが、ライフサイエンス辞書では「徴候、指標、指示、効能、適応症」などがあり、文脈によっては「症状、疾患」と訳される場合もあります。
スライド資料などでは、動詞の名詞化や体言止めを使った文章が多い:何が何を修飾しているか、文脈からしか判断できない場合があります。
メディカル翻訳に興味を持っている方の参考になれば幸いです。
お読みいただきありがとうございました。