翻訳だけで食べていけるか
こんにちは。アメリカ生活5年目のメディカルライター、メディカル翻訳者のYukaです。
ソーシャルメディアでも話題にされることの多い「翻訳だけで食べていけるか」問題について、「今から翻訳者になる人」を想定して、私なりの考えを書きたいと思います。
まず「翻訳で食べていく」といった場合にも、人によって状況は違います。
・専門分野があるか
・どのくらいの時間働きたいのか
・目指す収入はどのくらいか
ここでは仮に、「専門分野があり」「月に160時間働き」「年収500万以上」を目指すとします。
私自身はこれまでのブログにも書いているように、フリーランスで国内外の翻訳会社と契約し、メディカル専門で翻訳をしています。翻訳チェックはほとんどしていません(性格的に向いていないと思っているためです)。
一般的に単価が高いとされているメディカル翻訳であっても、自分や家族のための時間をある程度確保したい場合、国内の翻訳会社とのフリーランス契約だけでは、年収500万を超えるのは難しいと思っています。
(500万というのは適当に決めたキリのよい数値で、深い意味はありません。また、これから参入する人を想定しています。)
国内の翻訳会社の単価は海外より低いだけでなく、(正確にはわかりませんが)ベテラン翻訳者さんが契約した当時の単価よりもどうやら低いようなのです。
ただ、翻訳会社がクライアントから支払われる金額の半分以下が翻訳者に支払われることを考えると、契約時に1円以上の値上げ交渉が成功する可能性は高くありません。
それでは海外の翻訳会社との取り引きだけすればよいかというと、それも簡単なことではなく、ある程度の経験、時間、運が必要です。
トライアルに合格すれば仕事がもらえる日本の翻訳会社と違い、海外の翻訳会社では、案件がある時に向こうから声をかけてくるパターンが多いからです。また気をつけたいのは、海外といってもいろいろで、ヨーロッパ→北米→アジアに行くにつれて単価が下がることが多いです。母体は北米企業でも、実際の基盤がアジアにあるところの単価はアジア基準です。
また北米やヨーロッパの翻訳会社では、(言語関連でなくても)PhDを持っていることで優遇されることがあります。日本では翻訳経験年数が最も重視されていますが、海外では翻訳経験とPhDが同等に扱われている印象があります。翻訳者を目指すためにPhDが必要ということではありませんが、専門分野のPhDを持っている人は海外の翻訳会社との契約がよりスムーズに進む可能性があります。
そこで、これから年収500万以上の翻訳者を目指すための現実的な対策としては、
・国内の翻訳会社のトライアルに合格し、翻訳経験を積む(ここでは単価は高望みしない)
・LinkedInやATAなど、海外の翻訳会社の目に留まるところに自分のプロフィールを置いておく。海外と取引きしたい人にはLinkedInは必須
・いろいろなCATツールを使えるようにする
・英文でのメールのやり取りに抵抗をなくす
・単価の高い海外の翻訳会社から声がかかるのを待つ
・クラウドソーシングサイトにはできるだけ手を出さない
・翻訳以外の仕事もする
・専門分野がある人はそれをアピールする
翻訳以外の仕事をするというのは、精神的な面でも技術的な面でも役に立つと感じています。私はメディカルライティングをしていますが、語学力を活かした違うタイプの仕事(通訳や講師など)をする人もいます。
翻訳で一定の収入が得られるようになるには時間がかかります。また、これはフリーランス全般に言えることですが、契約先からこの先も同じように仕事がもらえるという保証はどこにもありません。
まとめると、翻訳で年収500万以上を得ることはうまくやれば理論的には可能。ただし、リスク管理の面からも翻訳以外に収入源を持っておくのが安心、ということが言えると思います。